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    昔がたり-仲ちゃんの話

    2013'01.31 (木)

    仲ちゃんの話-五色の椿(3)

    椿イメージ「仲ちゃん、お汁粉食べてかない?」
    と神田の叔母さんが言った。

    鶴池を望む広い座敷には、
    組子細工の猫間障子がはまっていて、
    一間幅の回り廊下に
    小振りなイスとテーブルが置いてある。
    掃き出しの分厚いガラスの前に立つと、
    ゆらゆらと、広い芝の庭の向こう、
    土居(盛土の塀)の植木越しに、
    叔父さんたちが今まさに
    寒鮒と格闘しているのが見えた。


    大島を着てお汁粉を運んできたおばさんは、椿の花のように美しい。
    と仲ちゃんは思った。
    そのおばさんが、正面に座ってまじまじと見ているもんだから、
    餅がつっかえてゲホゲホなるのを、また、優しく撫でてくれる。
    仲ちゃんはミミズのように赤くなったり白くなったり、忙しいことだ。

    「仲ちゃんあんた、うちの子にならない?」
    「コウちゃんはね、春になったら東京へ行っちゃうんだよ。」

    唐突な申し出に、仲ちゃんはますます激しくむせながらも
    おばさんの気持ちが、なんとなく分かった。
    コウゾウさんは神田の繊維問屋の一人息子だから、
    商いを本腰入れて習うためには、いずれ
    東京に居を移すことになるのが自然の成り行きだ。
    おばさんはこの家に取り残されてしまう。
    おじさんは今までどおり、週末には帰ってくるが、
    若いコウゾウさんはそのまま東京に居付くだろう。
    やがて所帯を持てば、東京の人になってしまうに違いない。

    おかわりをよそりに立ったおばさんの後姿が、仲ちゃんにはせつなく映った。

    クローバーライン

    組子障子イメージ  猫間障子イメージ
    さて、文中の組子細工(クミコザイク)とは、
    釘を使わずに木と木を組み合わせて
    様々な幾何学模様を表現する技術で作られた装飾的木製品です。
    江戸中期から山武杉の産地である山武市周辺でも盛んに作られ、
    障子や欄間などの建具に組み込まれました。(上総建具という分野)
    猫間障子(ネコマショウジ)とは、
    障子の一部に、左右に開閉できる小さな障子を組み込んだもの。
    元は、通気や猫が出入りできるようにするための細工ですが、
    現在は小障子の部分にガラスをはめたものが一般的です。
    またこれとは別に、上下にスライドして開閉するものは、雪見障子と呼びます。
    組子細工も猫間障子もちょっとした贅沢品。裕福なコウゾウ家ならではです。

    (つづく)
    昔がたり 昭和初期 小学生仲ちゃんの話。
    通常の記事更新の合間に、ゆっくり書いて行こうと思います。
    気分が乗ってきたら毎日更新になるかも?…わからないです。
    のんびりお付き合いください。

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    昔がたり-仲ちゃんの話

    2013'01.26 (土)

    仲ちゃんの話-五色の椿(2)

    鮒は、寒に入ると湖底に淀んでものを食わなくなるので、泥臭さが減って美味くなる。
    鶴池につないであるコウゾウさんちの船は、
    大きさが畳二枚ほどで、底の平たい四角い船だ。
    三人は、仲ちゃんの用意したミミズを二段の釣箱の下の段に入れ、
    新聞にくるんだ少しの酒と、肴の入った重箱を叔母さんから受取って、
    鶴池の中ほどまで来ると、竿を静かに湖底に突き差して、船をとめた。
    鮒屋
    「そっちはどんなあんばいだい。」
    「こないなあ。」
    「いや、繊維だよ。」
    「ああ。悪くないみたいですよ。叔父さんのとこはさ。」
    「まあまあさ。もうじきもっと、物が動くようになるぞ。」
    「そうだな。」「うんうん。」

    コウゾウ青年は、
    すでに家業の繊維問屋を手伝って、神田と行き来していた。
    シナ事変勃発から数年。戦時の気配はあるがまだ対岸の火事。
    叔母さんが用意してくれた重箱には、数の子やら昆布巻きやら、
    裕福な食べ物がそこそこ入っている、まだそういう時勢だ。
    そんなものをつまみながら、タバコなんかふかしながら、半日さっかい船の上。
    小料理屋のタケや、写真館のキクオちゃんや、近辺の好奇心の強い子どもらが、
    時々チョロチョロと対岸に出てくるのを、シッシと手を振って追っ払う。

    竿は竹製の五段の入れ子式で、いちばん手もとの節には小さな象嵌が施してある。
    糸は天蚕糸(テグス)という半透明の野生種のカイコの糸で出来ている。
    ミミズを刺して鉛をつけて沈め、船の竿掛けに三本ずつ並べた竿の、
    糸の先の箸のような細長い浮きが、ひとつだけ縦にチョンチョンと動いている、
    それをさっきから三人はじっと見つめていた。
    不思議とアタリは三人いっぺんにやってくるものだ。
    「まだか。」
    「まだまだ。」
    「まだだ。」
    食いつきの悪い寒のさなか。湖底に潜む鮒との駆け引き。
    美味いとわかっている魚。猫のように慎重な三人。
    そして次の瞬間、浮きはスポッと水中に消えた。

    (つづく)
    昔がたり 昭和初期 小学生仲ちゃんの話。
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    【追記】
    写真のお酒は、昨年末に一度ご紹介した清酒富翁 北川本家の鮒屋三右衛門です。
    平成24年12月28日の記事「京都みやげ備忘録-お酒編」
    江戸時代初期、宇治川沿岸で船宿を営んでいた鮒屋の三右衛門が副業で酒を作り、
    「鮒屋の酒」という銘柄で三十石舟で大坂へ、さらに江戸へ送られて
    東人(あずまびと)の舌をとらえたと伝えられています。
    三右衛門の酒は、船宿の客に供された濁酒のような酒だったのではなかろうか
    と想いを巡らしながら、これを書いています。
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    昔がたり-仲ちゃんの話

    2013'01.22 (火)

    仲ちゃんの話-五色の椿(1)

    椿 自由花作品春の待たれるこの季節。椿の美しい季節です。
    今年は寒さが厳しく、多少遅くなりましたが、
    我が家の近辺の山にも、真っ赤な美しい藪椿が
    ほろりほろりと、ほころび始めました。

    椿を見ると思い出すのがこの作品です。
    かなり昔の所属支部花展の出瓶作品(拙作)。
    写真を眺めていると、花材調達や制作の苦労を
    昨日のことのように思い出します。
    その話はいずれ後日に。さて今回は、
    仲(ナカ)ちゃんの思い出がたりの続編です。
    しばらくの間、稚拙な作文にお付き合いください。

    クローバーライン

    寒に入ると仲ちゃんは、
    コウゾウさんちの枇杷の木の
    根元のミミズを掘りに行く。
    コウゾウさんちの玄関脇には、五色に染め分けられた見事な椿の大木が一本ある。
    寒の最中にふくよかな花を開き始めるその椿の木の、横を通り抜けて裏庭に回ると、
    大きな枇杷の木があって太ったミミズがしっか捕れるのを、
    小学二年生の仲ちゃんは知っている。

    仲ちゃんの家のハナレから、裏木戸をくぐって左に出ると、
    荷車一台で幅いっぱいの七軒町小路(シチケンチョウコウジ)。
    父が下駄屋を営んでいる表通りとは反対の方向に向かって歩き、
    右手にお稲荷さん、左手に水門橋を見て、坂をのぼりきった向こうに鶴池がある。
    コウゾウさんちは、鶴池を南に望む湖畔にあった。

    神田の叔母さんは、父のすぐ下の妹。
    色白の面長で、器量を好まれて神田駿河台の繊維問屋に早くに嫁いだ。
    繊維問屋のあるじは、妻の実家近くの鶴池をいたく気に入り、
    湖畔に豪奢な家を建て、妻子を住まわせてそこから神田へ通った。
    コウゾウさんはその家の長男だ。仲ちゃんとは従兄弟どうしだが、
    仲ちゃんは末っ子だから、下手な親子ほどの年の差がある。

    さて、仲ちゃんの十人の叔父さん叔母さんたちの内、
    「赤羽の叔父さん」は、駄洒落が好きなサクい好人物。
    「世田谷の叔父さん」は、婿に行ったので苗字は違うが、
    名前を仲ちゃんと同じ仲太郎といい、だからかわいがってくれる。
    「神田の叔母さん」の息子、コウゾウ青年と合わせて、
    この三人は極めて仲がよかった。三人共通の趣味があるからだ。

    (つづく)
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    家族と生活

    2013'01.17 (木)

    雪の被害

    お隣の家は敷地いっぱいの総2階、片流れの大きな屋根から、
    我が家の庭に雪がどっと落ちてきました。
    そこに植えてあった葉牡丹が10本、
    かぶせてあったバケツごとつぶされて、木っ端微塵です。(涙)

    関東地方、すごい雪でしたね。今年はまだまだ降るのかしら。恐い。
    当日の夜のうちに、郵便受けまでの庭の雪をどかしておいたのに、
    朝、新聞を取りに行った父が、いきなりスッテンコロリンして肘打撲しました。
    たいしたことはなかったですが、お気に入りの上着の袖に穴があきました。

    近所の皆さんも、その日は朝から道路に出て、除雪作業、大騒ぎでしたよ。
    みんなが自分の家の前を除雪すれば、結果的に、道路はだいたい開通します。
    山間部なので、降った翌日に除雪を済ませないと、
    道路が1週間も凍りついてアイスバーンになっちゃうんです。
    お外で近所のおじさんから、温かいコーヒーのふるまいなんかもあり、楽しい除雪。
    しかし・・・腰痛&疲労困憊で、夕飯のあとストーブの前で眠りこけてしまいました。
    風邪引かないようにしなくちゃね。

    畑の雪今日の我が家の畑の、ソラマメの芽。
    植物って温かいのかな。
    芽のまわりだけ雪が溶けています。











    畑の雪の上に、一列にきれいに並んだ猫の足跡。
    畑の雪  畑の雪
    冷たいだろうねぇ、あの子たち、素足ですよ。
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    いけばな

    2013'01.14 (月)

    池坊東京連合支部展

    久しぶりのおのぼりさん、上野の東京都美術館へ行ってきました。
    池坊東京連合支部の花展に、京都研修所時代の仲間3人が出瓶しています。

    Mさんの作品「ぼけ」
    Mさんの作品

    SOちゃんの作品「ろうばい」
    SOちゃんの作品

    Tさんの参加した合同大作
    Tさんの合同大作
    さすが、首都東京の第1線でがんばってる人たちの花は、垢抜けてるわねぇ。

    上野駅は見上げると、とても素敵な壁や天井でした。
    上野駅

    花展拝見前には「つばめグリル」でランチ。
    つばめグリル
    和風ハンブルグコースセット 1,440円 うふふ

    拝見後には館内「Mcafe」でお茶。
    Mcafe
    焼プリンロールケーキと紅茶 1,060円 えへへ

    女の子4人寄ったら、しゃべる、食べる!
    とっても楽しい1日でしたよ。みんな、また会おうね~♡
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    おいしいもの

    2013'01.07 (月)

    京都みやげ備忘録-お菓子編

    前々回に引き続き、おはな厳選の京都みやげをご紹介します。
    京都いけばな研修所通いの、6年間の、おみやげ経験の集大成。
    それぞれHPを見つけたので、自分の備忘録として載せましたが、
    季節的にお取扱いのない商品もあるようです。
    まわし者ではありませんので、どうぞご安心を。(笑)

    京ばあむ
    おたべの京ばあむ
    株式会社おたべ
    生八橋ももちろんはずせないけど、今どきの京都みやげにこれ、お勧めです。
    豆乳と抹茶のスポンジに、抹茶砂糖のクリームがコーティングされていて、
    そのクリームが美味しいんですよ。
    3.5㎝厚は駅構内でも買えますが、5㎝厚はデパ地下行かないと買えません。

    栗阿弥若菜屋の渋皮付栗納豆 栗阿弥
    若菜屋本家 株式会社
    栗の甘納豆だけど、甘くないの。
    真ん中で鉢巻している渋皮つきのが美味しいです。
    ちょっと高いけど、先様にとても喜ばれました。








    豆大福
    仙太郎の豆大福
    株式会社仙太郎
    大きくてふわっふわ、あんこの甘さが絶妙。
    ただし、買ったその日のうちに食べないと良さが半減します。
    伊勢丹の地下で行列が出来るお店です。
    平日の3時頃なら並ばずに買えますから、日程に余裕のある旅行のときにお試しを。
    これは、家で心配しながら待っていてくれる家族へのおみやげですね。
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    いけばな

    2013'01.01 (火)

    言祝(ことほぎ)の花

    南天と水仙の生花

    初春のお慶びを申し上げます。
    本年もどうぞよろしくお願いします。

    今年最初のいけばなは、南天と水仙の生花二種生(拙作)です。
    紅白の彩りが祝儀の席にふさわしく、
    年賀の床の間を飾る花として、代表的なとりあわせのひとつです。
    南天の花言葉は「私の愛は増すばかり」「良い家庭」。すてきでしょう?
    また南天(ナンテン)は「難を転ずる」に通じ、とても縁起の良い植物です。

    こういう語呂合わせ、くらしの中にもけっこうありますよね。
    スルメイカ(寿留女烏賊)のことをアタリメ(当たり目)と言ったり。
    葦=アシ(悪し)をヨシ(良し)と読んだり。
    黒豆(まめに暮らす)昆布(よろこんぶ)鯛(めでたい)など縁起を担ぐお節料理も。

    ただの駄洒落ではありません。
    日本は古来「言霊の幸はふ国(コトダマノサキワウクニ)」
       (言葉の霊力が幸福をもたらす国という意味)
    「声に出した言葉は現実の事象に影響を与える」と神道では考えるそうです。
    物事を良いほうに解釈して声に出すことで、
    その幸せを自分の方に引き寄せる力が、日本語にはあるのです。
    嬉しいときや楽しいこと、感謝の言葉を、今年もどんどん声に出して参りましょう!
    生け花 いけばな 生花 活け花 イケバナ 花 華 はな ハナ フラワー 華道 茶華道 アレンジメント 花活け 花生け はないけ 花器 花瓶 おはな
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