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    昔がたり-仲ちゃんの話

    2012'09.04 (火)

    仲ちゃんの話-天神様(4)

    「ナカチャーン」
    今度はもっと、近くで聞こえたような気がした…。

    したとたんに そいつの
    口とおぼしき場所には 歯がむき出しになった 
    二つ穴の開いた鼻の上に みるみる 深く醜いしわが たたみこまれる 
    そいつの視線ビームは 二人の肩を通り越して宙をにらみ 
    メンタマが ボロリとこぼれんばかりに巨大になった 
    それはまったくもって すごい形相で 
    そして一声 するどい鳴き声をたてて 3メートルも飛び上がったのだ 
    蛇池の滝  蛇池の滝
    小学生二人の、ぶったまげようを、想像して欲しい。
    恐いと思っていたものが、どうやら言葉を理解するらしい、と二人は安堵しかけた。
    安堵しかけたとたんに、そいつが飛びかかってきたのだ。完全に虚を突かれた。
    言わずもがな二人は逃げ出した。いや、正しく言うと腰を抜かしてひっくり返った。
    胆の小さいキクオちゃんといっしょで、せめて良かった。
    二人で絡み、抱き合い、つんのめりながら、お互いに掴めるところを掴みあって、
    どうにかこうにか、そいつと反対の方向に移動できたから。

    「わああああ」「わああああ」
    泡を吹き、もんどりうち、やっと天神様の左まで出てきたところで、ドカン! 
    今度はヌリカベにぶち当たって、それを突き飛ばして二人もいっしょに大破した。
    「痛いっ、あいたたた、あんたたち!なんなのよ、もう仲ちゃーん。」
    ヌリカベも、言葉をしゃべった。
    ヌリカベは、今年始めに東京へ嫁に行った、仲ちゃんの一番上の姉ちゃんだった。


    仲ちゃんはあいつの最後の鳴き声を憶えていない。
    その姿かたちも、ようよう思い出せない。
    目に焼きついているのは、真っ白いメンタマの、意外にきれいな眼差しだけだ。
    あいつのことは黙っていたから、姉にも父母にも、さほど厳しくは叱られなかった。
    2年生の担任の先生は、やさしい女先生で、宿題を1週間待ってくれた。
    次の日曜日の真っ昼間、二人はおろるおそる、また天神様に行ってみたが、
    そのときはもう、リンも燃えていなければ、池にはあいつの痕跡も無かった。
    キクオちゃんが天神様にお供えしたキュウリが、干乾びて扉の前に転がっていた。
    変わったことと言えばただ キュウリがパックリ半分になっていた それだけだ。

    (「天神様」はおわり)
    昔がたり 昭和初期 小学生仲ちゃんの話。
    通常の記事更新の合間に、ゆっくり書いて行こうと思います。
    仲ちゃんの話はまだ続きます。のんびりお付き合いください。

    前後の話は、カテゴリ「昔がたり」でまとめて読めます

    【追記】
    本文に添付した写真は、
    数年前に仲ちゃんといっしょに行った蛇池の景色です。
    この滝の反対側を見ると、美しい蓮が一面に咲いて、
    渡る風は涼しく、まさに極楽浄土のながめ。
    ↓おまけの写真です。お口(耳?目?)直しにどうぞ。
    蛇池

    蛇池

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